
このスーツ格好良いだけど、本切羽じゃないからなぁ・・・
なんて悩んだ経験はありませんか?
高級なスーツの代名詞になっている本切羽仕様。
しかし本当に高級なスーツとして拘るべきポイントなのでしょうか?
今日はちょっとニッチなスーツの袖口に関して深堀りしてみたいと思います!
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ファッションライター
るゅう
某スーツ店で10年以上の店頭販売業務を経て、現在はWEB担当としてTPOに合わせたファッション知識とトレンド情報を発信中! TPOに合わせたスタイルはお手の物 !今日はちょっとニッチな切羽に関して深堀していきたいと思います。
本切羽とは

袖口についているボタンホールが開閉できる仕様になっている仕様を指します。
「本開き(ほんあき)」とも呼ばれます。
袖口に最も近い第一ボタンだけを外して抜け感を演出するなど、洗練された着こなしを楽しむのにうってつけのディテールと言えます。
本来の言葉の意味として、「本切羽」は袖口が開く仕様を指し、「本開き」はボタンホールを使って袖口が開ける仕様と分けて使われていました。
しかし現在では同義として仕様されることがほとんどです。
「本切羽」と言われればボタンホールがフェイクではなく、袖口が開くものを広義にみなさん使っておられる状況です。
開き見せとは

袖口についているボタンホールが閉じられており、袖口が開かないようになっている仕様のことです。
袖口を開けることは出来ないため、フェイクデザインとして袖ボタンは装飾として付けられています。
また、ボタンホールすらなく、飾りボタンのみの袖もあり、そちらも開き見せに分類されます。
開き見せ仕様は既製品のスーツに多く見られ、流通している仕様としてはこちらが1番多く、一般的です。
筒袖とは
最も簡易的な袖口の仕様で、しっかりと端まで袖が縫われていて文字通り筒状になっています。
あまり見かけない仕様ですが、フェイクボタンなど何もないシンプルな袖のことを指します。
イギリススーツは開き見せ仕様!

本切羽は開き見せに比べて作りが複雑で、高い縫製技術が求められます。
そのため高級仕様とみなされることがあるのですが。
本切羽は手間と数センチ角余分に生地が必要になる事に間違いはありませんが、
“手間がかかる & 生地を少し余分に使う=高級である”というのは一概には言えないですよね。
実際、クラシカルなイギリススーツは「開き見せ」が基本です。
本切羽のルーツは イタリア ナポリ職人の技術力を見せるための工夫!

イタリアのナポリでは、スーツの仕立て人が腕前を誇示したり、
ライバルであるイギリスのスーツと差をつけたりする目的で本切羽を採用することがあります。
「本切羽=高級スーツ」という考えは、そんなナポリのスーツ職人のあいだで浸透している風潮が関係しており、
特にイタリア風スーツスタイルの人気が高い日本ではその傾向が強いです。
実際のところ本切羽にする意味
「本切羽=高級スーツ」という考えが普及しているので、高級感や”良いスーツ着ている感”をアピールするのには好都合といえるかもしれません。
実際、オーダースーツなどでは本切羽はオプションとして設けられていることが多いです。
しかも本切羽のオプションは人気があります。
実際問題、本切羽にすることにお金を払う方おり、結果的に高級感やお洒落な印象を与える仕様になっているのは確かです。
ただ、本切羽でないとしてもスーツとして問題はありません。
フランス革命家 ナポレオンが指示!?

そもそもなぜ袖口にボタンがついているのでしょう。
その起源は諸説ありますが、1つの有名な話はフランスの革命家ナポレオンと関係しています。
ナポレオンの軍がロシアへ進軍していた時の話です。
ロシアのあまりの寒さに隊員たちは鼻水をたらし、制服の袖口で拭いていました。
袖口は鼻水でカピカピです。
それを見たナポレオンは制服が汚れてみっともないと感じ、鼻水を拭きにくくするために袖口にボタンをつけたというのは割と有名な逸話です。
とんだ革命家ですね(笑)
お医者様が作業をしやすいように?
ボタンの開け閉めができる本切羽は、英語で「surgeon’s cuffs(外科医の袖口)」といいます。
19世紀初頭、お医者さんが作業をするとき、汚れないように袖をまくる目的でボタンを開け閉めできるようにしたそうです。
袖をまくらずにジャケットを脱げばいいのでは?
と思いますが、当時と現在では服装に関する考え方に違いがあります。
19世紀初頭は、シャツは肌着として扱われていました。
現在では普通に行われている「ジャケットを脱いでシャツ1枚で過ごす」ことは割と恥ずかしい行為だったようです。
そのため人前でジャケットを脱ぐことはなく、手術の際は袖をまくる必要があったのです。
当時の時代背景に合わせて作られた機能が本切羽(本開き)ということになります。

本切羽のメリット
先述のとおり、本切羽には「高級スーツの証」というイメージがあります。
本切羽仕様でスーツを仕立てることで、ビジネスシーンでの印象がワンランクアップするはずです。
また、仮にオーダースーツを作るのであれば、オプションとして手を加える醍醐味という側面もあります。
せっかくスーツをオーダーするのであれば、本切羽仕様にして特別感を演出することも楽しみの1つでしょう。
袖から一番近い、端のボタンを一つだけ外しておけば、さりげなく本切羽であることをアピールできるだけでなく、ジャケットの袖口に抜け感を与えられます。
本切羽のデメリット
ディティールに拘りを持たせられる本切羽ですが、デメリットもいくつかあります。
まず、オーダーなどで仕立てる場合、多くのお店ではオプション扱いであり、別途費用が掛かってしまうことです。
オーダースーツとしてのオプションなら大体+2000円~4000円くらいが相場かなと思います。
また、既成のジャケットで本切羽を選んだ際、最も注意すべき点はお直し(補正)ができない点でしょう。
袖口から一番近いボタンまで大体3cm程度ですので、もし袖を詰めるようなお直しは、1CMが限度です。
もっと袖を短く詰めたい場合、袖山といって肩の部分からしかできません。
お直し料金も高くなりますし、袖山は着心地に大きく影響しますのであまりオススメできません。
既製品の本切羽仕様のジャケットはサイズがぴったり合っていることが最重要です。
ボタンの数が3個か4個
スーツの袖ボタンは基本的に3個か4個のものが多いです。
3個と4個でフォーマル度に差がないですが、主に下記のような特徴があります。
・ボタン3個⇒礼服のスーツに良く用いられる
・ボタン4個⇒最もスタンダードなタイプ。ビジネス用スーツに多い
ボタンの3個と4個に関しては無理に意識する必要はなく、好みを優先してください。ただし、どうしても心配な場合は上記に合わせたボタンの数を選ぶといいでしょう。
ボタンの数が5個
袖ボタンの数が5個のタイプは少し主張が強くなるので、ビジネスシーンに向いているとは言い難いですが、手元の印象を強くしたい時には5個にしてみることもおすすめです。
ボタンの数が2個
「スポーティジャケット」とも言われているブレザーは主に袖ボタンは2個です。袖ボタンが2個のタイプは主にカジュアルジャケット用のデザインに用いられているので、ビジネスシーンや冠婚葬祭などのフォーマルな場面での利用はおすすめできません。
ボタンの数で出身地を表していた?
元々袖ボタンの数は、出身地を表すものとして使われていました。英国であれば、イングランドは4個、スコットランドは3個、ウェールズは5個などといった風です。 現在にその風習は残っていないので、好きな数を選んで頂いて大丈夫です。
今日はスーツのちょっとニッチは袖口のまとめでした。
結論
・本切羽の方が現在も「ちょっと良いスーツ」感は出しやすく、本切羽を粋だと捉えてる人は多い。
・だからといって、本切羽=高級スーツ というわけではないが、ちょっと良いスーツのシンボル的な使われ方をしている。
といったところでしょうか。
見た目にも分かりやすい場所なので、財布やコートだけブランド品、中に着てるインナーはユニクロのように、ちょっとした「見栄」に近い気持ちかな?と個人的には思います。私もそれに近い気持ちで本切羽が好きですし。。
全然違うよって人、ごめんなさい(笑)